ショビ書房

ハロプロや仏像、日常について書いています。

「オフサイド」と「ルポ川崎」、そしてほんの少しのテラさん。

「オフサイド」

先日「オフサイド」を久しぶりに読んだら、やっぱり面白かった。

 

オフサイド 1巻

オフサイド 1巻

 

 

「オフサイド」は川崎高校(通称川高)という不良の吹き溜まりの学校が舞台。
土手の下にあるから「土手高」とバカにされながらも、高台にある川向かいの名門校、横浜南(通称ヨコナン)をライバルにサッカー部は奮闘します。

主人公は熊谷五郎。川崎だけど熊谷。
本当はヨコナンに入るはずが、試験会場に向かう途中に同級生が車にひかれそうになるのを助けるハプニングで不合格に。
すべりどめの川高でおちこぼれサッカー部に入るのだけど・・・・という話です。

 



五郎は今でいうところのチートキャラで、ひたすら人格者で、長身で頭も良く、そして徹頭徹尾サッカーが強い。どれくらい強いかというと、最初はキーパーだったのに途中からフィールダーに転向していきなり得点王になっちゃうくらい強い。血のにじむような努力をしている描写もない。健康管理も適当で、「コロッケは箸でぺったんこに潰してからソースをまんべんなくかけるとご飯が二杯食べられる」と豪語する。野菜はポテトサラダで採っていると言うタイプだとみた。

今のスポーツ理論重視なマンガからしたら都合主義ともいえる五郎のチートっぷりだが、「オフサイド」は理論や努力、根性、あるいは必殺技といったスポーツマンガの要素を省いて“部活のきらめき”を結晶させた名作です。

授業の合間にこっそり学校を抜け出して他校を見に行ったり、試合のハーフタイムに会場のはしっこで泥だらけのまま幸せそうにまどろんだり。川高イレブンという魅力的なキャラたちが織りなす青春群像は、少年マガジンで数少ない女性作家として第一線を橋ってきた塀内夏子にしか描けない美しさです。

五郎とルポ川崎

私が「オフサイド」を初めて読んだのは幼稚園。
それから数十年の年月を経て読み返してみて思ったのは「あれ、五郎ってこんなに乱暴なキャラだったっけ・・・・」ということでした。

とてもいい奴で優しいのですが、一回キレると手がつけられなくなる。チートキャラなので力が強く、誰も止められません。五郎がキレてチームメイトをぶん殴り、流血させる描写が結構たくさんありました。

「ルポ川崎」は、2015年に起きた川崎市中1男子生徒殺害事件をきっかけに、川崎に生まれ育った貧困層の若者たちのリアルを追ったルポルタージュです。

 

ルポ 川崎(かわさき)【通常版】

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「ルポ川崎」を読んでから「オフサイド」を読み返すと、チートで穏やかで故障ひとつしない五郎の眩しいくらいの光の陰に、不慮の事故で名門ヨコナンに入れず、土手高で不良たちの面倒をみて、一個のコロッケで二杯の白飯をかっ食らう五郎の底知れない鬱屈が、とめどない暴力となって現れていたのではないか、という邪推がよぎったのでした。

この邪推は「まんが道」におけるテラさんと同じようなもので、キャラが高潔すぎるので何か邪悪な要素で穴埋めしたくなるという読者心理です。
「まんが道」もトキワ荘の青春群像劇なので、若者の青春群像には高潔な人物が中心にいてこそ輝くのかもしれない。

 

まんが道(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)

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そしてそんな読者の願望を実際に叶えてしまったのがこのマンガ。
「ドギワ荘の青春」の黒テラさん、最高です。

 

江口寿史のお蔵出し 夜用スーパー (CUE COMICS)

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